■アンコール初日/7月1日

午前中はアンコール・トム見学。
遺跡の3日間フリーパス、1人/$40。
南大門から入ってバイヨン寺院、象のテラス、ライ王のテラス、他を回る。
黒ずんで苔むして風化した砂岩はイメージ通りだが、規模の大きさは想像以上。
四面塔は約50あり(顔は4倍で約200!)顔のひとつがこの大きさ。(写真参照)
石と石の隙間は大きく、大きな地震でも来たら崩れそうに思える。
バイヨン寺院のレリーフによる12世紀の物語は果てしなく続き圧巻。
雨風にさらされていなかった所のガルーダ像のレリーフは他の場所とはメリハリが全然違い、くっきりと躍動的だ。千年の月日が飴を舐めるように石を丸めてしまったみたい。
結構な暑さの中を母も元気に歩いていて一安心。

バイヨン寺院の周りを象で母と一周する。1人/$10。
高所嫌いのニカさんはパス。
滑り台に登るように階段を上がった所から乗り込んでみると、思ったより高い。
おまけに歩き始めると、かなり揺れる。怖い。
最初はとまどったけど、堅くならずに揺れに身体をまかせているとすぐに慣れた。
象使いのおじさんは素足の親指と人差し指で象の耳の付け根を挟んで動かす事によってコミニュケーションをとっているようで、常に足で象の耳を引っ張っている。
象に触らせてもらった。
堅くてシワシワの肌にチクチクした意外な程細い毛がまばらに生えている。
象はとてもおとなしくてちょっと涙目だ。重たい思いをさせてごめんね。

昼はカンボジア料理初体験。予想に反して美味!
空芯菜(中が空洞になっている葉っぱ)の炒め物や黒胡椒になる前の青胡椒の炒め物などが美味しい。
鶏肉や野菜の味も濃厚で、これなら期待できるぞ、カンボジア料理!

午後は車で村を通り抜けてパンテアイ・スレイへ。
道沿いには粗末な高床式の住居が点在して木に吊したハンモックでのんびりと昼寝する人々も見える。
高床式住居は湿気と暑さから守ってなかなか快適そうだ。
ガイドさんによると、暑さに慣れているカンボジアの村人は気温18°になったらもう寒いらしい。
なので寒く感じると家の下で火を炊くのだそうだが、たまに家まで燃えてしまうそうで...おおらかと言うか何というか。
いつも感じるのだが、こういう貧困そうな村の子供達の目はとても綺麗で笑顔がとても明るい。大人も暑さの中でゆっくり生活している感じだ。

カンボジアでは自殺する人は少ないそうだけれど、ストレスは無さそうだなあ。
貧乏でもこんなのどかな村で身の丈の生活ができたら、人間はそれで充分幸せなんじゃないだろうか。

気づくと、道行くほとんどの車にナンバープレートが付いていない。
どうしたことかと尋ねると、税金を払っていないからもらえないのだそうで、
事故さえ起こさなければ問題ないらしい。そういえばここまでに信号機ってあったけ?
ガイドさんによると、「日本人はいつも先の将来の事を考えているけど、カンボジア人は今日の事だけ考えている」らしいから、事故があったらきっとその時考えるのでしょう。
一年中暖かくて冬の蓄えの心配しなくていいからそんなふうでいられるんだよね。
そりゃあ、ストレスないわ。

車中、母はガイドさんに飯田弁でしゃべりまくる。
カンボジア人の現地ガイドさんは意味が分からず困って私を見る。
「頼むから、ゆっくり標準語で話してあげて」と言うと
「これは標準語だ」そうで、まいったなあ。

パンテアイ・スレイは赤色砂岩とラテライトで造られたレンガ色の寺院だ。
見学したアンコール遺跡の中のレリーフはここが一番古いのに一番精密で彫りも深く美しかった。神への信仰とは言え、ここまで執拗に石に細工した現場はどのような熱気に溢れていたことか。しかし、不自然に屋根の方が黒ずんでいるのは、ビルマとの戦争中に人々がここに住み着いて煮炊きしたからススで汚れているのだそうで、先祖の熱意はなかなか後世に伝わりにくいもののようです。

その後はオールドマーケットでお土産物や魚と野菜と果物が集まった市場を見学。
小ぎれいな表通りから一歩中に入ると地べたに生ものを広げていて足の踏み場もなくて干物のような凄い臭いだ。

なんとなく人々は疲れていて空気も淀んでいる感じ。
待望のドリアンも見つけたけれど、蠅がたかっていて危なそうだったので断念。
ここでは地雷で足を無くした人からお金をくれとつきまとわれる。
政府が保護しない限り、このような人の生活の、どこに前向きな希望を持てというのだろうか。なのにカンボジアは賄賂の国で、街の所々に建つ豪邸は軍人と役人のものだそうだ。世界は悲しい程の不公平で満ちている。

ここでは初めてスコールも体験。
日本の夕立程度だったが、重くて暗い雨だった。

そしてプノン・バケンにてアンコールの夕日見学。
ここではかなり急な山を登るというので母は車で待機。
それでも大勢観光客が行くのだからと高をくくっていたが、本当に厳しい道だった。
急勾配の山道をはい上がる感じで20分程登った後は、奥行きが15cm高さ50cm程度の滅茶苦茶な階段を蟹歩きでよじ登ってプノン・バケンという寺院跡に到着。
苦労して登ったかいあって、さすがに360°の パノラマが広がっていて周辺が一望できる。

ここでアンコー・ルワットを初めて遠くからながら目にして、ちょっと感激。
帰路ではニカさんが、急階段から落ちそうになった女の人に後ろから洋服を捕まれてあやうく一緒に落ちそうになるというアクシデントがありながらも無事帰還。
車に戻ると運転手さんと母が楽しそうに話している。
どうやら母は運転手さんに日本語を教えていたらしい。
まだ若い運転手さんは日本語を覚えて、ワンランク上の仕事を目指しているようでとても熱心に勉強していた。素晴らしい!ちゃんと先の事考えているではないですか。
それにしても、ちゃんと標準語を教えたんでしょうね、お母様。

夜は伝統の美しいアプサラの舞いを観ながらカンボジア料理をいただく。
ここでの夕食もとても美味しかった。ビールもよく冷えていて、暑いだけに一層ありがたい。辛くなく、醤油(魚醤)ベースや炒め物が、初めての食材でも日本人の口に違和感ない。レモングラスやコリアンダーの様な香菜やココナツも嫌みなく使われている。
とにかく野菜や鶏肉の素材の味が自然で強くて美味。
ただ魚料理はいまいち。
こんな感じで長い一日はお仕舞い。

観光地を回ったせいではあるが、シェムリアップからは内戦の爪痕は感じられなかった。ホテルは豪華でも村は貧乏そうだったし、地雷で足や手を無くした人が物乞いをしていたり小さな子供が物売りをしていたり、で、いつもながら後に悲しい気持ちを引きずるのだが、どこでも人々が男女問わず、とても穏やかで優しくおとなしい雰囲気なのだ。
宗教的になのか、迫害された歴史からなのか、はたまた暑さのせいなのか。
2010年には地雷も完全撤去されるそうで、戦争の記憶も薄れる事でしょう。頑張れカンボジア。