奇跡

我が家に来てからのニカママの体調は優れず、自力では何もできない完全介護生活でした。 (藪医者)病院で診てもらっても、年齢も年齢だし、背骨も曲がっているので仕方ないとの事。
お義母さんの周りには、苛立ち、恐れ、悲しみ、不満、不安、が燻って見ているのも辛い気持ちです。
私たちも5日間の介護生活の中で、オムツ替えも、義歯の手入れにも慣れました。
体力の無い人の身体を起こして移動させるのはとても大変で、腰に負担が来るのも体験しました。
義母さんが、今は亡き人や昔の知人と大きな声で会話しているのにも驚かなくなりました。
寝たきりになったら読書三昧できると密かに思っていましたが、読書どころかテレビさえ点けられなくなることも知りました。
ニカさんと、人間こういう時には、何(モノ、道具)が必要なのかなどという話などしながら気を紛らわせました。

そんな5日目の夕方、呼吸はしているように見えるのですがいくら声をかけても反応がありません。
慌てて救急車を呼ぶと心肺停止状態とのことで、救命措置を受けながら青梅市立総合病院へ運ばれました。
落ち着かない気持ちで病院で待つこと5時間。
深夜の緊急病院でニカさんは、「お袋は、ここに死にに来たのかもなぁ。」
「愛する息子の側で過ごして看取られれば、お義母さんも本望だよね。」 と、すっかり諦めていたのですが、青梅市立総合病院のカネダ先生の実力はすごかった。

その場で血液検査をして体の状態を調べ、服用している薬の種類と量を確認し、データを見ながら私たちに状況を詳しく説明してくれました。
どうやら横浜のかかりつけの病院で処方されている薬の配分が良くないようなのです。
緊急で心臓に外付けのペースメーカーを付けるなどの治療を受け、意識が戻ったのは翌日のこと。
それはまさしく奇跡でした。
さらに奇跡は続きます。
面会に行くと、ニカママの様子がすっかり別人のようで、神様のように穏やかな笑顔に包まれていました。
そして「美子さんは、日本一のお嫁さん。隆は幸せだ。本当に今までありがとう」と涙を流してくれ これまでの楽しい思い出を次々に語り始め、見たこともないような大笑いをしてくれたのです。
思わずニカさんと顔を見合わせ、看護婦さんに「何か劇薬を盛りました?」 でも、あのまま我が家で亡くなってしまっていたら、こんなニカママの言葉を聞く事もなく、私たちには最期を看取れなかった後悔が残ったと思います。

医療とは、本人のみでなく家族のためでもあるとつくづく感じました。 ところで心肺停止の臨死体験中、ニカママはお花畑を見たのでしょうか?
「お義母さん、お花畑見た?」と聞いたら、「塩船観音のツツジが綺麗だったねぇ。」とのこと。
それがあの世の入り口のお花畑なのか、昔の記憶なのか、今となっては定かではありません。

今も入院中ですが、その後は順調に回復し、我が家に来た時よりもずっと元気になっております。
それに伴い、性格も今までのニカママに戻りつつあるのが、嬉しいような、残念なような。
ニカさん曰く「お袋は、ここに生き延びるために来たんだなぁ…。」 どうやら、そのようでございます。


塩船観音.jpg
写真は塩船観音のツツジです。

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コメント

  1. アトム より:

    劇的で慌ただしい日々だったですね
    それにしても良かった良かった・・
    人は症状ひとつで良い人にも嫌な人にも変化しますが
    親父の時の経験では
    最後が大事だということをとても思いました
    まずは先生に感謝ですね

  2. カネゴン より:

    すごい、ニカママ!
    よかったね~
    循環器のカネダ先生は確かオスカネの主治医だったよ。
    オスカネもニカママも元気になってメデタシ、メデタシ…
    とは言え、これからがまた大変だね。
    やれることだけ、やる。
    そんな開き直りも介護には大事と最近やっと悟ってきたよ。

  3. gop より:

    お二人だけで無理されぬ様、外の力も使って下さい。

  4. ヨシコ>アトム より:

    確かに、家族にとっては最期のイメージが大切ですね。
    神様のようになったニカママが、
    そのままで逝ってしまったら、
    ものすごく美しく悲しい最期だったと思います。
    しかし、今はもう普通のニカママに戻ってしいました。
    結構ワガママを言ってます。
    これも運命というものなのですね。(^-^;).. 

  5. ヨシコ>カネゴン より:

    諦めていたニカママが回復して
    医学ってすごい!と感激したけど、
    医者によってこんなに治療法に差があるなんて思わなかったよ。
    カネダ先生は、オスカネの鼻茸を除去したり、ニカママを蘇生させたりと、スーパードクターだね。
    「やれることだけ、やる。」もその通り。
    無理はしないけど、後悔もしないようにバランスを取りながら
    乗り越えようと思っているよ。 (^.^)v  

  6. ヨシコ>gopさん より:

    gopさんも、ありがとうございます。
    ニカママは今はまだ入院中なので、
    私たちも自宅介護中よりは楽してます。
    問題は、退院した後ですね。
    ニカママの本拠地は、横浜のニカ姉の家なのですが
    問題は山積みです。
    また相談に乗ってください。

  7. 直子 より:

    これ読んでびっくりしてドキドキしながら読み終えました。
    いろいろ考えさせられる記事だったよ。
    意識が戻ってよかったね。そしてそんな最高のお礼を言ってもらえるなんてよっちゃは幸せな人だなあ。
    その言葉が聞けてよかったね。
    よっちゃのおばさんが来る予定は変更になったのかなあ。

  8. ヨシコ>ナオチャ より:

    母は、明日善一郎が東京に出張なので、一緒に来て
    1泊だけしていくよ。
    一緒にニカママのお見舞いは行くけれど
    これでハハーズも解散かも。
    ニカママのあの言葉は奇跡の魔法のようでした。
    今はもう魔法は解けて、カボチャの馬車だよ。(▼▼#)