二階堂隆のセミナー報告-3

 2008年11月14日 (G-SHOCK誕生秘話+デザイナー活用事例集/東京都中小企業振興公社) 11月14日、東京都中小企業振興公社にて、エルグデザイン代表二階堂隆がセミナーを行いました。定員50名の所、100名を超える方々に聴講していただきました。
ご参加いただいた皆様、お忙しい中大変ありがとうございました。

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今回の発表内容は前回のセミナーで好評だった「G-SHOCK誕生秘話」「デザイナー活用事例集」です。 「G-SHOCK誕生秘話」は「壊れない時計があったら良いな…」という言葉に共鳴した3人のプロジェクトチームの開発ストーリー。 実は事前の調査マーケティングは全くなかったのです。(そんな言葉さえも知らなかったらしいです)勢いと、信念と、ごまかしや妥協をしないで本物の商品づくりを目指した事が成功の鍵でした。 ここで前回のセミナー報告で秘密にしていた答えを発表しましょう!

前回の㊙-10mの高さである会社の3階のトイレの窓から試作品を落として試行錯誤を繰り返した事。なぜトイレの窓だったか…も、笑えて納得の説明付きです。
Ans.- 笑えて納得な理由は、「他の社員から白い目で見られていたので、こっそりトイレの窓から投げるしか無かった…」らしいです。

ここでおまけのエピソード。 二階堂が「落下させた試作品を毎回3階から庭まで取りにいくのは面倒なので、いっそ紐でも付けて落としたらどうか。」と設計の伊部さんに提案した事がありました。 すると「それでは紐が邪魔して自由落下の条件を満たさないから駄目!」と即刻却下されたらしいです。その時二階堂は、なるほど〜!の設計魂に感服したそうです。

前回の㊙-デザインする上で「でかい、重い、厚い」というネガティブな言葉を、あるポジティブな言葉に置き換えてみた事。
Ans.- その言葉は…?  でかい → 存在感  重い → 重量感  厚い → 信頼感 だそうです。ここからボリューム感のある独創的な形状が生まれました。

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続いての「デザイナー活用事例集」は、この1年ほどの、企業とエルグデザインとのものづくりの事例を5例ご紹介いたしました。 どうしてデザイナーを使おうと思ったのか、実は企業により理由は様々なのです。 そして、これらの企業のほとんどは、デザイナーと仕事をするのは初めて。 どうやってデザイナーを選んで良いのか…どうやって仕事を発注したら良いのか… デザイナーからは何をしてもらえるのか…。
そんな手探りな状態からの商品開発ストーリーは、「G-SHOCK誕生秘話」のような華やかさはありませんが、ものづくりに携わる企業の方には是非聞いていただきたい内容でした。

デザイナー活用事例集 -1(有)テクノム : 介護用昇降テーブルの開発 東京都青梅市にある、少量生産の特殊な機械の設計をしている会社です。従業員は、3名の規模です。 テクノム様は試作1号機、2号機とトライされていたのですが、 性能は評価されてもデザインの評判がおもわしくなかった事がデザインを依頼された理由です。 介護用とはいえ、食事は楽しくあるべきです。 そこから商品コンセプト:「食事を楽しめるテーブル」にふさわしい素材、形状は何なのか考えました。

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商品開発の手法としては、福祉施設で働く方々に直接リサーチしています。 この様にマーケットが限定的な場合は、現場で働く方の声を聞いて製品に反映させる開発スタイルが望ましいと考えます。 これは、とても確実性の高い方法です。

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こちらの商品は少量生産なので、成型品は使えません。 パイプ等の部品は既製品の中から形状を吟味して選択しました。 合板の天板から天然木に変えて質感を向上させましたが、同時にコストを下げる事にも成功してます。

デザイナー活用事例集 -2(株)三輝 : 「詰め替えシャンプー用エコポンプ」 東京都大田区 (資本金1000万円) 事業内容は、流体継ぎ手の設計、製造、販売です。 溶接の安全弁では国内シアー1位。現在社内製品で、OEMが占める割合は 100%です。 阿部社長には自社ブランド商品の開発をしてOEM100%体制からの脱却をしたい、というご希望があり、社長のアイデアを商品として具現化するためにデザイナーに依頼されました。 コンシューマー製品を調査する場合は、ショーへの参加は大変有効な手段です。 三輝様はまず試作した商品を、ジャパン・ハウスウェア・トレードショーに出展しました。ここで多くの業者さんから注目され、一定のマーケットがある事を確かめることができました。 製造メーカーさんが、販路を持っていることは稀ではないかと思います。 この問題を解決したのが東京ビックサイトでの展示です。 展示会では、様々なバイヤーの方と会うことができ、販路の開拓も達成することができました。

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社長のものづくりへのこだわりもあり、とても真面目で性能の良い商品となりました。 現在は東急ハンズやTVショッピングでの販売も決定し、量産体制に入っている所です。

デザイナー活用事例集 -3(株)アドフォクス : 計測機器のリニューアル 東京都青梅市(資本金6,500万円) 事業内容は、計測機器・音響機器などの製造、販売です。 自社ブランドのイメージ向上のため、新規の高機能計測器の開発の際 従来のデザインを刷新したいとの要望からデザインを依頼されました。 良いブランドイメージと言っても曖昧なものです。 そこでまずイメージパネルを作成し、(株)アドフォクス様とエルグデザインとで、商品イメージを共有する所から始めました。 特殊な需要ですので、数量が出る商品ではありません。 ここでも金型を使った成型品を使用しない条件でデザインを検討しました。 一部にアクリルを使用して、中央の画面を保護しながら、高級感を感じさせる効果を両立しました。 ブランドイメージの向上との目的からadphoxのロゴが目立つよう、ロゴの入るプレートは別部品の構造を取りそこに目を引くレイアウトにしています。 来年早々に生産開始の予定です。

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デザイナー活用事例集 -4(株)栗原工業 : 直流蛍光ライトの開発 東京都調布市(資本金1000万円) 事業内容は、光応用機器の設計、製造、販売です。 栗原工業様は、蛍光灯の「ちらつき」を無くして眼にやさしい照明器具を自社で開発しました。 性能の良さから、トヨタでは生産ラインの検査部門で使用されています。 一般にも販売されているのですが、デザイン面での評価は良くありませんでした。 そこでコンシューマーに向けたデスクライトの開発のためにデザインを依頼をされました。 デスクライトは市場が飽和状態にあります。そこで市場調査を行いイメージパネルを作成しました。そこからメインとなるターゲットイメージを設定して、企業とデザイナーはデザインの方向性を共有しました。

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現在はデザインが決定した段階ですので、詳細をお見せできないのが残念です。 このモデルは2009年1月にビックサイトで行われるショーで発表される予定です。 今後は製品化に向けて、従来にない困難な開発業務が伴います。 開発に関わる方達が、過去の経験のみにとらわれずに「チャレンジ」する精神が、このテーマがの成功の鍵を握っていると感じています。

デザイナー活用事例集 -5 ◎社 : 教育玩具の開発 ◎社は教育関連企業です。今回は幼児用の教育機器の開発で協力させていただきました。 この機種は、機能・構造ともに複雑です。 設計と生産は、中国で行う事が決定しておりましたので、◎社の担当者は「製造上のトラブルを最小限にしたい」と言うお考えから「今回の機種に類似した商品に実績のあるデザイナー」を選んでデザインを依頼されました。 実際に中国とのやり取りの中では、形状を理解してもらうことが困難で複数回の修正依頼をしました。 個人的な感想は、デザインに対する認識が中国の側と日本側では、まだ大きな隔たりがある様に思います。 しかし、国内の発注元の協力もあり、辛抱強く説得して行く事で現在は金型の完成度も上がって来たところです。 (↓未発表の為、部分の画像を荒らしています)

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最後に。 今回は、G-SHOCKの開発ストーリーと デザイナー活用事例集として5つのケースについてお話させていただきました。 G-SHOCKってそんな事からうまれたんだ…とか デザイナーってそんな風に考えるんだ…とか デザイナーの仕事ってそんな事もやるんだ…など少しでもご理解いただけたら嬉しく重います。 今回、ご紹介しました色々な企業様の規模も業態も製品もまったく異なっていますし、 デザイナーと企業の関わり方と言うのは、企業ごとに様々なスタイルがあります。 デザイナーの仕事の領域につきましても幅のある事をご理解いただけたのではないかと思います。 デザイナーに仕事を依頼したいとお考えの方は、「何をして欲しいのか」デザイナーを起用する目的をはっきりしておく事がとても大切です。 色々とお話させていただきましたが、持ち時間が少なくなってしまった上に内容を盛り込みすぎて、分かりにくくなってしまった事を反省しております。 今回のセミナーが、現在進めていらっしゃる商品開発に少しでもお役に立てれば幸いです。

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