マーシャルX/デザインプロセス

新潟にあるテクノクラフト社は、【ゴルフコース用情報端末】の開発・販売を手がけ、このジャンルでは全国シェア90%を誇っています。
【ゴルフコース用情報端末】とは、ゴルフカートに設置し、プレーヤーにコースの様々な情報を提供する情報端末です。
現行品を改良した新製品開発のご依頼を受けて、ゴルフを全くやらない私が、どの様にデザインを進めたか、そのプロセスを紹介したいと思います。

エルグデザインによるマーシャルXのデザイン

■事前の情報収集(テーマの理解と問題の把握)

1.使われる環境と使われ方を理解する
今回の製品は、「ゴルフ場でゴルフカートに搭載し、プレーヤーが各コースを回る時にコースの情報を事前に知るための製品」です。
私はゴルフをしませんので、後日同行し、ゴルフ場で実際の使用状況の調査を行いました。
現行品は、10インチモニター・厚みが80mmほどのもので、車内上部に設置するとプレーヤーが製品に頭をぶつけてしまう事が問題となっていました。
解決策について、テクノクラフト社と協議したところ、その点に関しては社内で事前に検討されていました。
製品デザインを発注する前に、先ず社内で製品があるべき方向を考えてみる事は、提案されたデザインを適正に評価する上でも重要な事です。

赤丸内:現行品と、使用状況確認

2.ターゲット(商品を購買する人)
使用するのは、ゴルフプレーヤーですが、本当のターゲットは、ゴルフ場運営責任者です。
ビジネス形態としてはBtoBtoCとなります。
ゴルフ場運営責任者に魅力を感じてもらうためには、プレーヤーに喜ばれ、製品を設置したゴルフ場の付加価値が高まる事が必要です。

3.生産数量
中小規模の企業で商品を開発する場合には「数量」が、しばしば障害となります。
ごく少数の場合では、製品の加工方法が板金などに限られるからです。
今回は、樹脂の成型品を使用する事が前提でしたので、形状の自由度があり外観的特徴を出しやすくなりました。

■デザインコンセプト 
1.製品の主役は、10インチに映し出される情報です。外観のデザインは、「脇役に徹すべし」
2.プレーヤーの多くは男性ですが、業界を活性化させるためには女性プレーヤーの拡大が要望されています。「女性にも好まれるデザインが望ましい。」
●以上から、今回のデザインイメージは「女性にも好まれる名脇役」としました。

■問題の解決
「プレーヤーが、頭をぶつけてしまう」のをどう軽減するか。
テクノクラフト社の皆様と協議して、ケース本体にクッション機能を設ける事にしました。
ケース本体の一部に「バンパー」を設ける様なイメージです。

■デザインアプローチ 
私のデザインは、「心のつぶやき」からスタートする事が多く、例えば、今回は、以下の様な感じでした。
1.精密感をキーワードにしたらどうか?男性的になるかな。
2.さりげなく「感じさせる」のも有りか。
3.クッション部分を強調して注意喚起する事も1つの手段だが、目立ち過ぎるのは避けたい。
4.ライバルは無いからデザインは、プレーンなイメージにするのも有りか。etc.

後は形状を模索し、ひたすら形を模索してラインを引く作業を続けます。

プレゼンした3案の中から決定したのがこちらのデザインです。

決定したデザインは、柔らかいチューブ状のものをケースの外周にぐるっと巻いたイメージからできたものです。

これを量産にして行く過程では、様々な問題を解決しなければなりませんが、設計者と一緒に解決して行く過程もプロダクトデザインの仕事です。
今回は、設計担当Kさんの「デザイン重視」のプロ魂と、実装設計Tさんの迅速な対応に助けていただき、満足行く製品に仕上がりました。

 この製品は外観だけでなく、性能・テクノクラフト社によるパネルデザインともに完成度の高いものです。
ゴルフ愛好家の皆様に喜んでいただき、ゴルフ場にとっては新しい起爆剤になってくれるものと思います。

エルグデザイン二階堂隆のデザインワーク

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